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第5話・付き合うまでのお試しデート その8

Penulis: さぶれ
last update Terakhir Diperbarui: 2025-05-01 20:13:26

「眞子、困ったら遠慮なく俺に言うんだぞ」

 玄さん…。嬉しい反面、ますます彼に謎を感じた。

「聞いてもいい? どうして私にそこまでしてくれるの? ただ、アプリで出会った素性も知らない人間だよ?」

「俺は眞子が気に入ったし、君が気になるからだ。それだけじゃいけないか?」

 その言葉は嘘に聞こえてしまうのが悲しい。婚活アプリで出会った他の三人は、みんな色々と訳アリだった。玄さんみたいないい男が、私みたいな庶民にアプローチする意図が解らない。

 もしかして玄さんって、カタギじゃないとか?

 飲食店って、的屋(てきや)――縁日や盛り場などの人通りの多いところで露店や興行を営む業者のこと――だったりして!

 縁日のお店なら子供も利用するし、だったら彼は…鋭そうな瞳や時折物憂げに見せる顔やしぐさ。気品も色気もある玄さんは、若頭的な立ち位置とか?

 それなら納得だ。やっぱり彼には、深入りしないように気を付けなきゃ。

 玄さんが普通の男性だったらきっと他の女性が放っておかない。知り合って間もないけれど、優しいし気も利くし、私の話をちゃんと聞いてくれる。その上ブラックカード持っているようなお金持ちで、イケメン。売れ残っているはずがない。そもそも売れ残りなんていう失礼な言葉ではくくれない。

「ありがとう。困ったら頼りにするね」

 頑なに否定するよりも肯定しておいて頼らなければいい話。もう、玄さんの謎には深く追求しないようにしよう。きっと彼は、危険な男だ。

 それから余すことなくデザートも堪能した。ふわふわ白玉の抹茶きな粉添えという可愛らしい白玉団子に抹茶を混ぜたきな粉がまぶしてあった。

 柔らかくてモチモチしていて、とても美味しかった。和菓子好きだから、余計に。

「ご馳走様でした」

 二時間の食事コースはあっという間だった。玄さんと楽しく話が盛り上がり、相談事だけじゃなくて趣味とか映画の話で盛り上がった。こんなに話が合う人は初めてだ。話が合うというよりも、何というか直感みたいなものが、合う気がする。彼と話していると居心地が良くて、楽しくて、時間の流れが早い。今日も気が付けば食事の時間が終わっていた。

「名残惜しいけれど今日は解散しようか。タクシー呼んておいたからそれで帰って欲しい」

「何から何までありがとう、玄さん」

「大したことはしていないよ。眞子が心配なだけ。また次
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